LOHAS studio
森孝浩@OKUTA
2025/11/17
武南は伝統校らしい引き締まった表情で入場し、昌平は落ち着いた雰囲気で整列。
初めて決勝を観に来た人でも“これが県の頂点を争う舞台”だとすぐに理解できる張り詰めた空気があった。
スタンドには、保護者、OB、同級生、地域の人々…立場は違えど、すべての人が純粋に両校の戦いを楽しみにしている表情だった。
前半は互いの長所を消し合うような展開。
武南は守備のスライドが速く、昌平の前線に自由を与えない。
昌平は個の力とボール運びの滑らかさで徐々に主導権を握ろうとする。
いずれが先に傾いてもおかしくない、非常に集中した80分。
後半に入ると、昌平がボール保持の時間を増やし、武南が鋭くカウンターに出る展開へ。
周囲の観客も、攻防が入れ替わるたびにどよめき、拍手が波のように広がった。
高校サッカー特有の「勢い」と「感情」の揺れが、スタンド全体を巻き込んでいく。
試合終盤、スタジアムの空気が一段と張り詰めたその瞬間、昌平がついに均衡を破る。
ゴールネットが揺れた瞬間、昌平側は大歓声、武南側は静寂と唸り声。
誰もが“これが勝負の残酷さか”と一瞬にして理解する場面だった。
0-1。
昌平が県を制し、武南はあと一歩届かなかった。
ただ、敗れた側にも拍手が鳴り続けていた。
選手たちの姿勢、試合のクオリティ、90分の集中力──
それらすべてが、観客の心に“敬意”を生んでいた。

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