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再三にわたる増改築が重大な構造的弱点の原因に
外見はよく手入れの行き届いた家

春日部市大衾地区は、埼玉県の一番東端にある。千葉県との境を流れる江戸川の右岸流域に開けた町で、最近春日部市に合併されるまでは大凧揚げで有名な庄和町の一部だった。対岸(東側)は千葉県野田市という位置関係で、都心から30km圏内にあるうえ国道4号線バイパスが南北に縦貫し、16号線が東西を結んでいるから交通の便もよく、東武鉄道の駅周辺は住宅地としての開発も進んでいる。

M氏邸は、南桜井駅から徒歩5分たらずの住宅地の一角にある。Mさんが入居したのは昭和47年というから、34年前のことである。大手ゼネコンが雑木林だった土地を造成した大規模分譲地なので、江戸川の近くながら地盤はいいようで、街区もよく整備されている。1区画あたりの敷地面積が比較的ゆったりしていて緑が多く、現在では落ち着いた雰囲気の住宅地になっている。

M氏邸は今ほぼ総2階建てになっているが、これは3度にわかる増改築の結果で、もとの家は2階に2部屋だけだった。2階左半分は建て増しされたものだ。このほか水回りの改装や床板の張り替え、壁の塗り替えなどを行ってきたそうで、数年に一度くらいの割合で補修や改装を行ってきた計算だ。このため一見したところ、よく手入れが行き届いた家という印象を受ける。

鉄骨構造ではわが国有数の技術者だけど

Mさんは現役時代、大手の鉄構会社に勤務していた技術屋さんだ。とくに溶接が専門で工学博士号を持ち、現在でも日本溶接協会や軽金属溶接構造協会などの役員を務めるこの世界では知られた権威者なのである。そうした関係で、阪神淡路大震災以後は鉄骨構造物の耐震強度などにつき、講演を依頼されることも多いということだ。しかしご本人も認めるように、こと木造建築物に関してはあまり自信がない。というよりも仕事一筋だったころにはあまり関心がなかったのかも知れないが、それでも最近になって参考文献などを調べているうちに、自分の家の安全性について少し不安になってきた。そうした矢先、たまたま目に付いた木耐協の耐震診断告知チラシを見て、確認する意味で診断を受けておくことにした。

既存構造と増改築の接合に大きな問題が

診断に先立って行われた綿密な現地調査によって、この家にはいくつかの弱点があることがわかった。それは、過去における3階の増改築に起因している。Mさんの話では、最初の増築は近所で見かけたリフォーム業者に頼んだのだが、その後は飛び込みで訪問してきた業者などに任せたこともあるようで、3階とも施工業者が違うらしい。それはともかくとして、既存家屋と増築部の取り合い(接合部分)が問題だった。いかにもツギハギの印象で、まるで積み木細工のように構造が一体化されていないのだ。もう1つの問題は、2階増築の時に1階の間取りを全く考慮していないため、2階の壁と1階の壁位置とが一致していない部分が多いことである。いわゆる直下率が低いので、地震などの外部応力に対してきわめて弱い構造になっている。

もともと地盤がいい土地なので、築年数からすれば布基礎に大きな劣化は出ていなかったものの、大きなひび割れ(クラック)が2か所に発生していた。これらの原因によって、M邸の診断数値は0.329とかなり低く出た。いうまでもなく「倒壊または大破壊の危険がある」という判定である。木造は専門外とはいえ、技術者だけにMさんの理解は早い。診断報告書を見て問題がどこにあるかを即座に見抜いたMさんは、ただちに補強工事を依頼することにした。

揺れない家になって、安心感が違う

改善プランは、徹底的に1階部分の壁を補強しようというものだった。既存壁の強度不足もさることながら、大きな間取り変更は難しいので壁構造の強化によって直下率の低さも補おうという考えである。壁補強箇所は実に14か所にも及ぶ。もともと内壁が少ない家ではあるが、外側の4面をガッチリ固めれば確実に強度は高まる。こうした本体構造の補強を行う一方で、クラックが発生していた補強の樹脂注入による補修、問題だった接合部の金物による緊結などが行われた結果、M邸の診断数値は「ほぼ安全」のレベルまで大幅に改善された。

補強工事は2006年の春先に行われたが、家にいることが多い奥さんがまず気付いたのが「揺れない家になった」ことだそうだ。M邸は表通りから1ブロック内側にあるので直線にすれば30mほど離れているのだが、それでも大型トラックなどが通るとガラスがビリビリ震えるほど揺れていたという。それが補強工事の後は、ほとんど揺れを感じなくなった。

ここしばらく関東地方には大きな地震が来ていないが、揺れない家になったことで地震に対する強さも確実に高くなっていると実感しているそうだ。やはり安心感が違うのであろう。

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